まずはそのまま
常温で熟したトマトを
丸かじりして甘みを堪能!
REPORT
穀倉地帯の石狩平野と、近くには石狩川
特徴的な土壌を有する美唄市へ
北海道は、土地の広さを生かした大規模な農業地帯。地域ごとの気象条件や立地条件のもと、稲作や畑作、酪農などが行われています。
道央に位置し、札幌市と旭川市の間にある空知エリアに属する美唄市は、かつて炭鉱で栄えた場所。市の西部は石狩川に沿っており、湖沼が点在しています。そのうちの一つ、マガンの飛来地になっている宮島沼は、ラムサール条約登録湿地としても有名です。豊かに広がる石狩平野では、穀倉地帯として米や麦、豆などが多くつくられるほか、野菜ではトマトをはじめカボチャ、白菜、アスパラガスなどが生産されています。
石狩川に近い場所で農業を営むのが、五十嵐農産の五十嵐盛朗さんです。17年ほど前、トマト農家だった実家にUターンし、父親とともに高糖度のフルーツトマト栽培に取り組み始めました。毎年少しずつ工夫と改善を重ねながら可能な限り有機栽培を行い、おいしさと安心・安全を追求。現在は、食べる人が自然と笑顔になれるような、本来の旨みと甘みが凝縮したおいしいトマトを届けています。
高糖度のフルーツトマトを目指すにあたって、五十嵐さんが就農当時から注力してきたのは土づくりです。というのも、農園のある石狩平野はもともと泥炭地。枯れた植物などが未分解のまま地層を形成しているこの土壌は農業には向いていないと言われており、もちろん高糖度のトマト栽培にも適していませんでした。
そこで行ったのは、ハウス内をすべて60センチの深さまで掘り起こし、土の中全面に防根透水シートを張り巡らせること。そうすることで、トマトの根が泥炭地へと到達するのを防ぐことができるのです。シートの上には米ぬかや海藻、サンゴ、卵の殻などを混ぜた養分たっぷりの土を戻し、トマトが元気に育つ土壌をハウスの中につくりあげました。
計9棟ものハウスにシートを入れる大変さはあるものの、その甲斐あって理想のフルーツトマトづくりが行えるようになったと五十嵐さんはいいます。土壌を整えることでハウス内は水はけが良くなり、水分管理もしやすくなったそうです。手間を惜しまず工夫を重ねたことで、糖度が高くおいしいトマトを育てられるようになったんですね。
糖度の高いフルーツトマトを育てるには、水分管理も重要です。五十嵐農産では、トマトが少ししおれる頃を見計らって少量の水と肥料分を与えることで、適度なストレスをかけながらトマトの甘みが増すようにしています。
その水やりのタイミングを見極めるため、五十嵐さんは日々時間を決めてハウスへ行ってトマトをしっかりと観察。葉の状態や場所によって水やりの時間を細かく調整するなど、ずっとハウスに張りついて観察と水やりを行っています。その姿に、よく一緒に農園へ行く子どもさんからは「お父さんの仕事は、とにかく農園を歩いてトマトを点検すること」と言われるのだそうです。
農園のある美唄市は、実は道内有数の豪雪地帯でもあります。苗の頃から徐々に温度を慣らしていくことや、夏場はハウス内を涼しく、そして冬場は低温障害にならないように、季節に応じて外気温とのバランスをとりながら温度管理をしています。
この地域ならではの土壌や気候を上手に生かし、そして工夫を加えながら育てるフルーツトマト。おいしいトマトができると、五十嵐さんはもちろん農園のスタッフにも笑顔が広がり、喜びにつながるといいます。北の大地で育てられた旨みと甘みがギュッと詰まったフルーツトマトを、ぜひ堪能してみてください。
RECOMMEND
農園直伝!おいしいトマトの食べ方
まずはそのまま
常温で熟したトマトを
丸かじりして甘みを堪能!
輪切りで
トマトをお尻側からヘタに向かってカット。
ゼリーの部屋もキレイに見える。
RECIPE
農園直伝!おいしいトマトのレシピ
❶トマトは輪切りに、モッツァレラチーズも薄切りにする。
❷お皿にトマトとモッツァレラチーズを交互に盛り、オリーブオイルと塩をかける。
❸生ハムを添えて完成。
❶トマトをざく切りに、そのほか旬の野菜など好みの具材を食べやすい大きさにカット。
❷鍋にトマト以外の具材を入れ軽く炒める。
❸トマトと水を加えて、塩、コショウ、コンソメを加えて具材が柔らかくなるまで煮込む。
陽射しを避け、日陰で管理。赤く熟した頃に常温で食べると、トマトの甘みを一番しっかりと感じられる。
食べる1時間ほど前に冷蔵庫から出して、温度を戻してから味わうとトマトの甘みがより楽しめる。
丸ごと冷凍。食べるときは湯向きし、そのまま食べてもよし、調理に使ってもよし。
お尻側から白い筋がしっかり出ていると、トマトがおいしい証!
ヘタの周囲が濃い緑色のものを選ぶのがおすすめ。緑色の部分は完熟すると真っ赤に。
実の表面に産毛があるのは、
トマトが元気に育っている印。
畑づくりと土づくり、水分管理にこだわって、しっかりと甘みを感じられるフルーツトマトを育てています。このトマトを通しておいしさと笑顔を届けられるように、これからも栽培に励みます!